上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ7 RESIDENT COURSE 解答 【症例 ER 35】

絞扼性小腸閉塞(腸管壊死なし).Strangulated obstruction with no necrosis












小腸だけの拡張だから小腸閉塞である.図1と,図10〜図13で腹水があり(※),拡張した小腸はgaslessで,図8〜図10で腸間膜の濃度上昇を認め(▲)絞扼性小腸閉塞を疑うべきである.図19のAと1から追跡するとAは図16のHで閉塞し,1は図17でbeak signを示し(↑)図16の19で閉塞する.同部で虚脱した小腸(SB)があり,丸数字1から図2の丸数字17が単純閉塞の小腸と解釈しclosed loopの診断がついた.壁肥厚を認めず,造影効果はやや減弱しているが壊死はないものと診断する.10時間後に腹痛が増強し,腹膜刺激症状を認めたので手術となった.図Aのように索状物(△)による絞扼性小腸閉塞で,約90cm長の回腸が壊死に陥っていた(図B).10時間前のCT撮影時にはまだviableな絞扼性小腸閉塞であった可能性がある.










文献考察1):strangulation obstruction(絞扼性小腸閉塞)
Gastroenterol Clin North Am. 2002 Sep;31(3):777-99.
Intestinal obstruction role of CT.
Frager D.
要旨:strangulation obstructionは閉塞した腸管の血流が途絶えた時に発症する.viable ischemiaとnonviable ischemiaに分類され,closed loopがstrangulation obstructionのprecursor(前駆者,前兆)の大部分を占める.単純性閉塞で内圧上昇のために腸管壊死を起こすことは極めてまれであるが,閉塞部位での屈曲が血管を圧迫し血流を減少させたり,強い脱水で腸間膜血流量が減少すれば起こりえる.

文献考察2):腸管・腸間膜循環障害を反映する画像所見
腸管虚血の画像診断】 絞扼性イレウス
  Author:古川顕(滋賀医科大学 放射線), 山崎道夫, 前田清澄, 高橋雅士, 村田喜代史, 永田保, 横山堅志, 坂本力
  Source:画像診断(0285-0524)21巻6号 Page612-618(2001.05)
要旨:closed-loopに循環障害が合併する際には,腸管閉塞部位において低圧の静脈閉塞が先行し,closed-loopに相当する腸管の壁および腸間膜に鬱血が起り,腸管は腸液で充満し拡張する.これに引き続いて動脈血流障害が発症する.罹患腸管は,この腸間膜動静脈の血行障害のため虚血に陥り,絞扼が解除されない場合には可逆性から不可逆性の虚血性変化を起して,腸管壊死,穿孔,腹膜炎を発症する.腸管,腸間膜循環障害を反映するCT所見としては,腸管壁の変化として,壁肥厚(拡張腸管で2mm以上),濃度上昇(単純CT),造影不良あるいは欠如,遅延濃染,“target sign”,壁内ガス,不整な“beak sign”などが挙げられる.また腸間膜の変化としては,濃度上昇,鬱血(engorgement of mesenteric vasculature),腸間膜血管内血栓,腹水などが挙げられる.絞扼性イレウスの診断におけるそれぞれの所見の感受性,特異性はさまざまであるが,特に,信頼性の高い有用な所見として,腸管壁の造影不良あるいは欠如,不整な”beak sign”,多量の腹水,腸間膜動静脈の位置逆転像,腸間膜濃度上昇および鬱血像が挙げられている.また,絞扼性イレウスの発症後最も早期に認められる所見としては,腸間膜の鬱血,濃度上昇の所見が指摘されている.絞扼性イレウスが静脈閉塞に伴う鬱血に始まることを考えると頷ける所見である.

 【 ←前の問題 】  【 このシリーズの問題一覧に戻る 】 【 演習問題一覧に戻る 】  【 ご意見 】 

copyright © 2010 Tokushukai All Rights Reserved
copyright © Yoshifumi HORIKAWA